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吉増剛造展
フクシマノヒカリノ渦

2025.05.24(Wed)-06.22(Sun)
11:00~18:00(最終日は16:00 まで)
月・火曜休廊(月・火が祭日の場合は営業し、翌日休)
軽食とソフトドリンクもお楽しみいただけます。

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 2013年3月11日、福島県浜通り・浪江町の請戸に立った吉増剛造は、災禍を受けたこの地の波間に何を見たのか。
 吉増と福島との深い関わりは、2010年に始まり震災を経て2012 年まで、会津若松と喜多方で毎 年開催された「会津・漆の芸術祭」での作品制作、パフォーマンスが核になっている。縄文時代の漆 をモチーフにした、gozo cinéと呼ばれる映像作品「The Voice of(漆)―会津にて」を2010年に制作。 同年と2011年にはトークイベントを、2012年には「掌の神」と題する展示をそれぞれ会津若松で行っ ている。これらに加えて2015年には、江戸末期、福島に滞在した浦上玉堂をモチーフにした映像作 品「浦上玉堂の魂の手ノ血が点々と」の発表を機に、玉堂ゆかりの地でもある猪苗代にてイベントを 開催している。
 そうした関わりの最中にあった、冒頭の請戸での体感は、その後3年を費やして刊行された詩集『怪 物君』創作のビジョンの一つにもなった。さらにこれらの縁は、2018年から2019年、会津若松の 福島県立博物館、猪苗代のはじまりの美術館、南相馬の埴谷・島尾記念文学資料館による連携展、「福 島の吉増剛造 会津・猪苗代・南相馬」の開催へと帰結した。
 また、吉増と福島をつなぐもう一つの楔としては、浪江に近く、連携展の開催地になった南相馬で 幼少期を過ごした小説家・島尾敏雄と、妻のミホとの結び付きが挙げられる。とりわけ島尾ミホとは、 1980年代から長年にわたって交流を続け、その故郷であり敏雄とミホが出会った地でもある奄美大 島の離島・加計呂間島を吉増は重ねて訪れ、2002年の紀行は、後に詩集『ごろごろ』を生み出した。
 遙かなる奄美の波間から福島の海へ。年月と場所を超越する2つの海景の重なりは、未知の声を 吉増にもたらすだろうか。様々な人と時代、土地のつながりが渦巻いていた、2010年から10年間 におよぶ福島での濃密な時間を、当時の吉増による原稿に、展覧会など福島での活動の記録を交え、 また、遠い種火である『ごろごろ』創作にまつわる資料を加えながら、今こそ振り返ってみたい。

篠原誠司(足利市立美術館学芸員)



■吉増 剛造 Gozo Yoshimasu
1939年東京生まれ。慶應義塾大学国文科卒業。1964年の第一詩集『出 発』以来、先鋭的な現代詩人として国内外で活躍。2016 年には個展「声 ノマ全身詩人、吉増剛造展」を東京国立近代美術館で開催。2017~18年には、 個展「涯テノ詩聲(ハテノウタゴエ)」(2018年)を足利市立美術館、 沖縄県立博物館・美術館、渋谷区立松濤美術館で開催。2018~19 年には、 福島県内の3館、福島県立博物館、はじまりの美術館、埴谷・ 島尾記念館文学資料で吉増剛造展を開催。2019年、Reborn-Art Festival(石巻市)に参加。2020年より、「葉書ciné」をYouTubeに て配信。2021年『詩とは何か』(講談社現代新書)『Voix』(思潮社)出版。 2024 年『DOMUS X』(コトニ社)出版。

■ライブパフォーマンス■
「reflection 福島2010-2019」
出演:吉増剛造
日時:5月25日(日)17時~
定員:30名(要予約)
料金:2,500円(ワンドリンク付)
●お問い合わせ●
artspace & café 0284-82-9172